論文の内容の要旨

 

【目的】

インターロイキン27(IL27)による抗腫瘍効果について検討した。

【方法】

悪性黒色腫腫瘍株を用いマウスに皮下腫瘍を形成させるモデルにおいて、IL27受容体α(WSX-1)ノックアウト(KO)マウスと野生型(WT)マウスでの腫瘍の増殖や樹状細胞(DC)移入による治療に対する応答を比較した。

【結果】

KOマウスは、WTマウスに比較して腫瘍が急速に増殖、かつ増大した。

WTDCを移入した場合でも、リンパ球にIL27受容体を欠損するKOマウスでは腫瘍の増殖が早く、瘍抗原特異的細胞傷害性Tリンパ球(CTL)の分化や増殖が弱かった。一方、DCWTマウスに移入する系(リンパ球は野生型)では、KODCの移入により、より強いCTLの分化や増殖が得られた。試験管内の実験でも、同様の結果であった。

【考察】

1.IL27の受容体欠損によりCTLの誘導が阻害されることから、IL27にはCTLの分化を促進し、これによる抗腫瘍効果を示す、2.CTLに癌抗原を提示するDCについては、IL27は機能抑制作用を持ち、このシグナルを遮断した場合により高い抗腫瘍活性をもたらす事が示唆された。

【結論】

IL27は二面性を持つ因子であり、CTL分化に対して分化促進作用、抗原提示細胞に対しては機能抑制作用を持つ。WTのリンパ球とWSX-1KOの樹状細胞の組み合わせにより効率的なCTLの分化が生じることから、治療への応用が期待される。

 

論文審査の結果の要旨

 

主査   出原賢治

副査   副島英伸

副査   戸田修二

 

本論文は,インターロイキン27(IL-27)による抗腫瘍効果について述べている。             

これによると,IL-27のレセプターであるWSX-1欠損マウスに悪性黒色腫細胞株を移入したところ、野生型マウスに比べて増殖が増大していた。悪性黒色腫細胞株を移入したWSX-1欠損マウスでは腫瘍抗原特異的細胞障害性Tリンパ球の分化や増殖が弱くなっていた。一方、WSX-1欠損マウス由来の樹状細胞では、逆により強いCTLの分化や増殖が得られた。    

このことより、IL-27は二面性を持ったサイトカインであり、CTLに対しては活性化作用を示す一方で、樹状細胞には抑制作用を示し、総合的にはCTLの活性化が強いために、抗腫瘍効果を示す方向に働いているものと思われる。         

以上の成績は,IL-27による抗腫瘍効果について新しい知見を加えたものであり,意義あるものと考えられる。       

よって本論文は,博士(医学)の学位論文として価値あるものと認めた。