論文の内容の要旨
【目的】
マウスアレルギー性鼻炎におけるインターロイキン27(IL−27)の役割について、以前に当教室で解析を行ったマウス喘息モデルと比較検討を行った。
【方法】
野生型(WT)マウスとIL−27受容体a鎖(WSX−1)欠損(KO)マウスに1週間おきに合計4回卵白アルブミン(OVA)を腹腔内投与して感作を行ったのちに、14回にわたりOVAを点鼻することによりマウスアレルギー性鼻炎を作成した。
【結果】
KOマウスは、WTマウスに比較して、クリニカルスコア、鼻洗浄液のサイトカイン産生などの局所症状が軽快した。一方で、血清の抗原特異的IgE、頚部リンパ節・鼻咽頭関連リンパ組織のサイトカイン・ケモカイン産生など全身症状においては、喘息モデル同様、KOマウスにて増悪していた。
【考察】
@過去に解析を行ったマウス喘息モデルでは、KOマウスにて局所・全身症状ともに増悪していたが、今回のマウスアレルギー性鼻炎モデルでは、KOマウスにて全身症状のみが増悪していたこと、AWTマウスのアレルギー性鼻炎モデルでは、鼻粘膜におけるIL−27受容体の上昇が認められたことから、IL−27は鼻粘膜において増悪因子としての働きがあることが示唆された。
【結論】
IL−27/IL−27受容体を欠損させることによって、マウスアレルギー性鼻炎では局所における免疫反応が抑制され、症状を軽快させることが可能である。
論文審査の結果の要旨
主査 出原賢治
副査 濱崎雄平
副査 福留健司
本論文は,マウスアレルギー性鼻炎におけるインターロイキン27(IL-27)の役割について述べている。これによると,IL-27のレセプターであるWSX-1欠損マウスを卵白アルブミンの腹腔内投与により感作した後、卵白アルブミンを点鼻投与してアレルギー性鼻炎モデルマウスを作製した。WSX-1欠損マウスは、野生型マウスに比較して、クリニカルスコア、鼻洗浄液中のサイトカイン産生などの局所炎症所見が改善していた。一方で、抗原特異的IgE、頚部リンパ節・鼻咽頭関連リンパ組織におけるサイトカイン・ケモカイン産生といった全身炎症所見は増悪していた。
このことは、鼻粘膜の局所においては、IL-27はアレルギー性炎症を増悪させているものと思われる。
以上の成績は,IL-27によるアレルギー性炎症について新しい知見を加えたものであり,意義あるものと考えられる。
よって本論文は,博士(医学)の学位論文として価値あるものと認めた。