論文の内容の要旨

 

【研究の目的】

一般高齢者住民の唾液中3-methoxy-4-hydroxyphenylglycol濃度(sMHPG)を測定し、種々の知的機能検査との相関を調べ、sMHPGによる認知症の早期診断の指標としての妥当性を検討した。

 

【方 法】

213名の高齢者のsMHPGガスクロマトグラフ質量分析計で測定し、知的機能検査:Mini-mental state examinationMMSE)、 Frontal assessment battery (FAB),  Beck depression inventory (BDI)との相関を調べた。

 

【結 果】女性のsMHPGは年齢と正の相関が認められた(r=0.24, P=0.003)。 また女性においてsMHPGMMSEFAB得点と負の相関を認め(MMSE: r=-0.26, P=0.002; FABr=-0.19, P=0.024)、この相関は年齢で補正にも有意だった。sMHPGBDI得点と男性で有意な相関を認められた(r=0.354, P=0.0036)

 

【考 察】今回の結果は少なくとも女性においてsMHPGの測定が知的機能低下の予測因子として検討する価値があると思われた。また血液中MHPG濃度の増加がアルツハイマー病で認められ、脳血管性認知症で認められないという報告があり、sMHPGの測定は認知機能低下を来たすアルツハイマー病以外の認知症性疾患の鑑別にも使用できる可能性も考えられる。

 

【結 論】

高齢女性のsMHPGは認知機能低下(MMSE及びFAB得点)と負の相関が認められた。

 

論文審査の結果の要旨

 

主査 佐藤 武

副査 熊本 栄一

副査 堀川 悦夫

 

本論文は一般高齢住民の唾液中MHPG濃度を測定し知的機能検査Mini-mental  state examination (MMSE),Frontal assessment battery(FAB),Beck Depression Inventory (BDI),との相関を調べた研究である。

その結果、女性の唾液中MHPG濃度は年齢との正の相関,MMSE,FAB濃度と負の相関が認められた。一方、唾液中MHPG濃度はBDI濃度(男性)で有意な正の相関が認められた。

以上の成績は,唾液中MHPG濃度測定が認知症の早期診断の指標として妥当性を証明しており、意義あるものと考えれる

よって本論文は,博士(医学)の学位論文として価値あるものと認めた。