論文の内容の要旨

 

【背景・目的】

Th2サイトカインIL-4は表皮角化細胞からさまざまなケモカインを産生させ,アトピー性皮膚炎などの皮膚疾患の病態に重要な役割を担っている.一方Th1サイトカインIFN- γの皮膚組織での好酸球性炎症反応における役割については明らかではない.そこで今回我々はIL-4によって誘導されるケモカインCCL26に対するIFN-γ の効果について検討を行った.

 

【方法】

正常ヒト表皮角化細胞NHEKにおけるIL-4由来のCCL26発現に対するIFN-γ の効果に付いて検討を行った.メッセージ発現についてはRT-PCRで,蛋白発現についてはWestern blottFACSELISAにて解析を行った.

 

【結果】

NHEKにおいてIL-4IFN-γの同時刺激を行った場合は,IL-4由来のCCL26発現は抑制された.一方でIFN-γの前処置はその発現を増強させた.NHEK細胞表面にはtype1 IL-4受容体が恒常的に発現しているが,IFN-γの刺激はIL-4受容体の発現を経時的・濃度依存性に増強した.このIL-4受容体発現増強の結果IL-4のシグナル伝達の増幅が確認された.

 

【考案】

NHEKにおいてIFN-γはその刺激する時期によってIL-4由来のCCL26産生に対し相反する効果を有した. IFN-γはIL-4受容体発現を変化させることによって,皮膚における好酸球性炎症の増強にも関与している可能性が考えられた.

 

論文審査の結果の要旨

 

主査 吉田裕樹

副査 成澤寛

副査 副島英伸

 

本論文は、表皮角化細胞から、IL-4刺激によって産生されるTh2関連ケモカインCCL26に対する、Th1型サイトカインIFN-γの効果を検討している。

 

これによると、正常ヒト表皮角化細胞におけるIL-4誘導性CCL26の発現をRT-PCR法やELISA法で検討したとき、IL-4とIFN一γの同時刺激ではIFN一γはCCL26の発現を減少させたが、IFN一γの前処置は、その発現を増強させた。この効果は、IFN一γ前処置が経時的・濃度依存的に、IL-4受容体の発現を増強させる機構によるものと考えられた。

IFN-γ前処置によるIL-4受容体の発現増強は、角化細胞におけるIL-4シグナルの増強をもたらした。

 

以上の成績は、アトピー性皮膚炎などの、皮膚表皮角化細胞や免疫反応が病態形成にかかわる疾患における、Th1型、Th2型サイトカインの相互作用とその結果産生される因子に関して新しい知見を加えたものであり、意義あるものと考えられる。

 

よって本論文は、博士(医学)の学位論文として価値あるものと認めた。