論文の内容の要旨

 

目的)

5FU系抗癌剤で術後補助化学療法を施行した進行胃癌症例を対象に、癌特異的遺伝子メチル化を6遺伝子について解析し、無再発生存率(disease free survivalDFS)との相関解析を行い、5FU系抗癌剤への感受性に寄与する遺伝子メチル化を同定する。

方法)

当科で胃切除術を行い、5FU系抗癌剤による術後補助化学療法を施行した38例及び、Control群として手術単独症例18例を対象とした。術後使用した抗癌剤はTS-1等の5FU系抗癌剤。平均投与期間は4.3カ月。平均観察期間は32.3カ月。DNAメチル化は、手術時採取した癌組織DNABisulfite処理後、methylation specific PCRを行い判定した。

結果)

補助化学療法群においてp16遺伝子メチル化のみが非メチル化に比べ、DFSが有意に延長していた(p0.038)。手術単独群においては相関を認めなかった。更に多変量解析において、p16遺伝子メチル化は術後再発の独立した予後因子となった(p0.043)

考察)

p16メチル化によって、p16の発現欠失がおこり、その結果細胞周期制御が破綻し、癌細胞における5FUDNA取り込みが増加することで5FU感受性が増強する可能性が示唆された。

結論)

p16遺伝子メチル化は5FU系抗癌剤により胃癌術後補助化学療法の感受性予測マーカーとなることが推測された。

 

論文審査の結果の要旨

 

主査 藤本一眞

副査 副島英伸

副査 徳永 藏

 

本論文は5FU系抗癌剤で術後補助化学療法を施行した進行胃癌症例を対象に、癌特異的遺伝子メチル化を6遺伝子(MGMT,hMLHl,CDH,Runx3,CHFR,p16)について解析し、無再発生存率との相関解析を行い、5FU系抗癌剤への感受性に寄与する遺伝子メチル化を検討したものである。

             

胃切除術(2000年〜2006年)を行い、5FU系抗癌剤による術後補助化学療法を施行した38例と手術単独症例18例を対象とした。術後使用した抗癌剤はS-1単独(31例),UFT単独(3例),5FU/CDDP(1例),S-1/CDDP(1例),S-I/PXL(1例),5'DFUR単独(1例)であり、平均投与期間は4.3カ月で平均観察期間は32.3カ月であった。補助化学療法群においてp16遺伝子メチル化が非メチル化に比べて無再発生存率が延長していた(p=0.038)。手術単独群においては相関を認めなかった。多変量解析において、p16遺伝子メチル化は術後再発の独立した予後因子となった(P=0.043)。       

 

以上、p16メチル化が術後5FU系抗癌剤の感受性に寄与し、さらにp16の発現欠失が癌細胞における5FUのDNA取り込みが増加することで5FU感受性が増強する可能性を示しており、意義のあるものと考えられる。

             

よって本論文は,博士(医学)の学位論文として価値のあるものと認めた。