論文の内容の要旨
【目的】
気道上皮細胞でIL-4/IL-13により誘導される新規再細胞外マトリックスタンパク質であるperiostinの生物活性および気管支喘息の病態における役割を明らかとする。
【方法】
1.肺線維芽細胞におけるIL-4/IL-13およびTGF-βによるperiostinの発現をRT-PCR,ウエスタンブロット法にて解析した。
2.健常者及び喘息患者の肺組織におけるperiostinの発現を免疫染色にて解析した。
3.“chronic asthma model”マウスを野生型;IL-4欠損;IL-13欠損マウスを用いて作製し,肺組織像,periostinの発現を解析した。
4.Periostinと種々のマトリックスタンパク質との結合を解析した。
【結果】
1.Periostinは肺線維芽細胞においてIL-4およびIL-13によりTGF-β非依存性に誘導された。
2.Periostinは気管支喘息肺にみられる上皮下線維化領域の新規の構成成分であった。
3.Periostinはtenascin-C, fibronectin,V型collagen,periostin自身と結合するが,その他のcollagenとは結合しなかった。
【考察・結論】
気管支喘息では,IL-4あるいはIL-13がTGF-β非依存性に線維芽細胞からのPN分泌を誘導し,他の既知の細胞外マトリックスタンパク質と結合することで上皮下肥厚が引き起こされると考えられた。
論文審査の結果の要旨
主査 吉田 裕樹
副査 徳永 藏
副査 長澤 浩平
本論文では,喘息の病態に関与する因子のうち,IL-4やIL-13により誘導される因子に注目し,この中からperiostin蛋白の発現や沈着状況を検討した。
これによると,マウス胎仔肺由来の線維芽細胞をIL-4やIL-13で処理したところ,Periostin
の遺伝子の発現誘導が認められ,また蛋白の主として細胞外への分泌が認められた。肺の線維化に関与するとされるTGF-βは,Periostinの産生に関与しなかった。また,線維芽細胞に誘導されるPeriostinは,エキソン使用の検討から,L型(肺型)であることが示された。
実際の喘息患者の肺においても,肺上皮下にPeriostinの沈着を認めた。
逆に,IL-4やIL-13を欠損するマウスにおいては,抗原感作による喘息誘導の系で,上皮下へのPeriostinの沈着減少を認めた
in vitroの実験において,Periostinは,自己,およびtenascin-Cやfibronectinなどの細胞外マトリクス蛋白との会合を認めこれらが,喘息における上皮下の線維化に関与しているものと考えられた。