論文の内容の要旨

【目的】

双胎胎児間の胎児心拍数基線の概日リズムの同期性と胎児持続性頻脈の同時発生の有無を明らかにする。

【方法】

妊娠35-38週の一絨毛膜二羊膜双胎(MD7症例,二絨毛膜二羊膜双胎(DD8症例で双胎の胎児心拍数を24時間同時連続収録した。収録データより各胎児の一時間毎平均胎児心拍数基線を算出し概日リズムの有無を検定し,持続性頻脈は出現時間帯を双胎間で比較した。そして双胎間の概日リズムの位相差を求めるため第2子の位相を一時間ずつ移動させて相関係数を算出し,最大相関係数を示す位相移動時間を症例毎に求め,持続性頻脈の有無で位相差を検討し,膜性で比較した。

【結果】

全症例の双胎両児に一時間毎平均胎児心拍数基線の有意な概日リズムを認め,胎児持続性頻脈の時間帯を除くと双胎間で同様のリズムパターンを示した。胎児持続性頻脈は双胎間で同時出現しなかった。胎児持続性頻脈の出現時間帯を除外した一時間毎平均胎児心拍数基線の概日リズムは双胎間で有意な相関を全症例で認めた。双胎間の位相差はDDの全症例でだったがMD4症例に位相差を認めた。

【考察】

双胎間での一時間毎平均胎児心拍数基線の概日リズムの有意な相関は共通のシグナルによる反応を示唆する。胎児持続性頻脈の出現は双胎間で独立しており胎児固有の因子での出現が示唆される。

【結論】

胎児心拍数基線の概日リズム発現には胎児を取り巻く環境が関与し,胎児持続性頻脈は胎児要因で出現する。

 

論文審査の結果の要旨

 

主査 野出 孝一

副査 頴原 嗣尚

副査 濱崎 雄平

 

本論文は,双胎胎児間の胎児心拍数基線の概日リズムの同期性と胎児持続頻脈の同時発生の有無ついて述べている

 妊娠35-38週の一絨毛膜二羊膜双胎(MD症例、二絨毛膜二羊膜双胎(DD)8症例に対して、胎児心拍数を24時間同時連続収録し,各胎児の一時間毎平均胎児心拍数基線を算出し概日リズムの有無を検定し,持続性頻は出現時間帯を双胎間で比較した。さらに双胎間の概日リズムの位相差を求めるため第2子の位相を一時間ずつ移動させて相関係数を算出し,最大相関係数を示す位相移動時間を症例毎に求め,持続性頻脈の有無で位相差を検討し,膜性で比較した。

その結果,全症例の双胎両児に胎児心拍数基線の有意な概日リズムを認めた。胎児持続性頻脈は双胎間で同時出現しなかった。

  以上の成績は,胎児心拍数基線の概日リズム発現には胎児を取り巻く環境が関与し,胎児持続性頻脈は双胎間で独立しており胎児固有の因子で出現することを示しており,臨床的に意義あるものと考える。

  よって本論文は,博士(医学)の学位論文として価値あるものと認めた。