論文の内容の要旨

【目的】

リポ蛋白リパーゼ(LPL)はトリグリセリドに富むリポ蛋白の代謝に関与する律速酵素であり,糖代謝にも重要な役割を果たしている。本研究では,LPL活性の増加が糖代謝能およびインスリン感受性に及ぼす影響についてヒトLPLを過剰発現するトランスジェニック(LPL Tg)ウサギを用いて検討を行った。

【方 法】

LPL Tgウサギの糖代謝能およびインスリン感受性の評価として,静脈内糖負荷試験(IVGTT),静脈内インスリン負荷試験(IVITT),ならびにグルコースクランプ試験を実施した。その後,解剖して脂肪重量を測定した。

【結 果】

IVGTTでは,グルコース投与後の血中グルコース値の推移にLPL Tgウサギと対照群との間で差は認められなかったが,インスリン値の推移はLPL Tgウサギが有意に低い値を示した(p0.05)。また,IVITTでは,インスリン投与後LPL Tgウサギの血中グルコース値は対照群に比べ有意に低い値で推移した(p0.01)。さらに,グルコースクランプ試験においてもLPL Tgウサギの平均グルコース注入速度は,対照群と比較して有意に低い値を示した(p0.05)。LPL Tgウサギの体重と脂肪重量は対照群に比べ有意に低い値を示したp0.05

【結 論】

以上の結果より,LPL活性の増加は体脂肪重量の減少インスリン感受性の亢進に働くことが示唆された。

 

論文審査の結果の要旨

 

主査 藤本一眞

副査 出原賢治

副査 野出孝一

 

本論文はリポ蛋白リパーゼ(LPL)過剰発現の影響をみた論文である。LPLはトリグリセリドに富むリポ蛋白の代謝に関与する律速酵素である。糖代謝能およびインスリン感受性に及ぼす影響についてヒトLPLを過剰発現するトランスジェニック(LPL Tg)ウサギを用いて検討している。

静脈内糖負荷試験(IVGTT),静脈内インスリン負荷試験(IVITT),ならびにグルコースクランプ試験を実施し、脂肪重量を測定した。IVGTTでは血中グルコース値の推移にLPL Tgウサギと対照群との間で差は認められなかったが,インスリン値の推移はLPL Tgウサギが有意に低い値を示した(p0.05)。IVITTでは,インスリン投与後LPL Tgウサギの血中グルコース値は対照群に比べ有意に低い値で推移した(p0.01)。グルコースクランプ試験においてもLPL Tgウサギの平均グルコース注入速度は,対照群と比較して低い値を示した(p0.05)。LPL Tgウサギの体重と脂肪重量は対照群に比べ有意に少なかったp0.05

これらの結果より,LPL活性の増加は体脂肪重量の減少インスリン感受性の亢進に働くことが示唆された。

 

 以上,本論文は博士(医学)の学位論文として価値あるものと認めた。