論文の内容の要旨

【目 的】

子宮体癌手術施行例で手術進行期IIIc群を後方視的に検討し,リンパ節転移様式と予後の関連を明らかにすることを目的とした。

【方 法】

当院産婦人科においてsurgical stagingが行われた子宮体癌IIIc24例を対象とした。臨床病理学的因子の有無における生存率の比較を行った。また,転移を認めるリンパ節の割合(Metastatic ratio: MR:転移陽性リンパ節の個数/切除されたリンパ節総数),転移部での間質の反応,リンパ節周囲脂肪織への浸潤と生存率の関連についても検討した。

【結 果】

年齢,組織型,組織分化度,筋層浸潤の深さ,子宮頸部浸潤の有無,子宮付属器浸潤の有無,脈管侵襲の有無での比較では生存率に有意差はなかった。MRが高い程有意に予後不良であった。間質反応を伴うリンパ節転移を持つ症例の5年生存率は18.2%で間質反応が無い症例の91.7%に比較して有意に予後不良であった(p=0.002)。リンパ節周囲脂肪織への浸潤を示すものも5年生存率25.0%で脂肪織浸潤を伴わない症例の90.9%に対して有意に予後不良であった(p=0.004)

【結 論】

転移を認めるリンパ節の割合,転移部での間質の反応,リンパ節周囲脂肪織への浸潤を検討することは子宮体癌IIIc期の予後推定のために有用である。

 

論文審査の結果の要旨

 

主査 戸田 修二

副査 宮崎 耕治

副査 魚住 二郎

 

本論文は,子宮体癌の手術進行期IIIc症例(n=24)の予後因子を解析している。

本研究では,年齢,組織型,組織分化度,筋層浸潤の深さ,子宮頚部浸潤の有無,子宮付属器浸潤の有無,脈管侵襲の有無での比較検討では,生存率に有意差はなく,これらの因子は予後因子とはなり得ないことが判明した。一方,リンパ節転移率(転移陽性リンパ節の個数/切除されたリンパ節の総数),リンパ節転移部位での間質反応,リンパ節周囲脂肪組織への浸潤は,予後不良因子であることが判明した。即ち,間質反応を有するリンパ節転移を持つ症例の5年生存率は18.2%で,間質反応のない症例の 91.7%に比較して有意に予後不良であった(p=0.002)。リンパ節周囲脂肪組織への浸潤を有する症例の5年生存率は 25.0%で,脂肪組織への浸潤を伴わない症例の90.9%に対して有意に予後不良であった(p=0.004)。

以上の結果は,子宮体癌 IIIc期の予後推定因子を明らかにしたものであり,日常臨床に応用可能な新知見であり,意義あるものと考えられる。

よって,本論文は,博士(医学)の学位論文として,価値あるものと認めた。