論文の内容の要旨
【研究の目的】
緑茶の主成分であるエピガロカテキンガレート(EGCG)は、各種癌に対する抗腫瘍効果が認められているが、子宮頸部腺癌に対する効果は明らかでない。また子宮頸部腺癌は化学療法や放射線療法に感受性が低いことが知られている。そこでEGCGの子宮頚部腺癌細胞に対する抗腫瘍効果を明らかにし、その有用性について検討することを目的とした。
【方 法】
子宮頚部腺癌由来細胞株OMC-4、TMCC-1を用い、EGCGを投与した後細胞増殖率測定、PCRによるテロメラーゼ活性の測定(TRAP法)、AnnexinV−FITCを用いたフローサイトメトリーによるアポトーシス細胞の検出、抗pKi-67抗体による蛍光免疫染色をそれぞれ実施し、検討を行った。
【結 果】
両細胞株において、EGCG100μMの投与にて細胞増殖率の抑制がみられ、テロメラーゼ活性も有意に低下していた。またアポトーシス細胞の増加も認められた。抗pKi-67抗体の染色性は、EGCGの投与により有意に抑制されていた。
【結 論】
EGCGは、子宮頸部腺癌細胞に対して細胞増殖抑制効果があることが認められた。その機序として、テロメラーゼ活性の抑制、アポトーシスの誘導、細胞周期停止作用が考えられた。EGCGは、子宮頸部腺癌に対して抗腫瘍効果を有し、抗腫瘍薬として有用である可能性が示唆された。
論文審査の結果の要旨
主査 徳永 藏
副査 出原 賢治
副査 池田 義孝
本論文は,緑茶の主成分であるエピガロカテキンガレート(EGCG)の,子宮頸部腺癌由来の培養細胞に対する増殖抑制効果について述べている。
これによると,子宮頸部腺癌由来細胞株OMC-4とTMCC-1の2株を用いた。50〜100μMのEGCGを投与したのち細胞増殖率を測定すると,OMC-4ではコントロールの40〜60%に抑制され,TMCC-1に対しては100μMで20%に抑制された。TRAP法によりテロメラーゼ活性をみるとEGCG100μMで著明に低下していた。AnnexinV−FITCを用いたフローサイトメトリーによるアポトーシス細胞の検出をおこなうと,EGCG100μM投与でアポトーシス細胞の増加も認められた。Ki-67抗体による蛍光免疫染色はEGCGの投与により有意に抑制された。
以上の成績は,EGCGは子宮頸部腺癌細胞株に対して細胞増殖抑制効果があり,その機序として,テロメラーゼ活性の抑制,アポトーシスの誘導,細胞周期停止作用が考えられた。これらのことからEGCGは子宮頸部腺癌に対して抗腫瘍薬として有用である可能性が示唆された。
よって本論文は,博士(医学)の学位論文として価値あるものと認めた。