論文の内容の要旨

【目 的】

川崎病発症および冠動脈病変とCD14遺伝子プロモーター領域の遺伝子多型の関連を検討すること。

【対象と方法】

同意の得られた川崎病67例、対照69例の全血より得られたDNAを、特異的プライマーを用いたPCRで増幅し、制限酵素(AvaII)で切断後に電気泳動にて遺伝子多型C/Tを決定した。川崎病群では、急性期の検査所見、有熱期間、ガンマグロブリン(GG)の総投与量、冠動脈病変の有無を診療録より検討し、急性期冠動脈病変発症例については、発症後1年以降の後遺症の有無についても検討した。GG投与前の16名の川崎病患者血清にてsCD14TNF-α、VEGFHGFELISA法にて測定した。

【結 果】

遺伝子多型の頻度は、川崎病と対照の両群間に有意差はなかった。川崎病群において、有熱期間、CRPTTが高値であった。急性期冠動脈病変発症例はCC3名、CT4名、TT10名とTTが高く(オッズ比4.05)、後遺症例はCC1名、CT2名、TT7名でTTのオッズ比は6.61と更に高値となった。GG未使用例を除く55例の検討でも同様であった。sCD14TNF-α、VEGFHGFはいずれもTTが高い傾向にあった。

【考 察】

CD14はグラム陰性桿菌の菌体成分であるLPSのレセプターであり、川崎病急性期に可溶性CD14が上昇し、近年、その遺伝子プロモーター領域の遺伝子多型が報告された。遺伝子多型と川崎病の発症には関連はないが、Tアレルを持つことで、急性期冠動脈病変発症および後遺症の残存が有意に高値となる。

【結 論】

川崎病冠動脈病変とCD14遺伝子プロモーター領域の遺伝子多型の関連性が示唆された。

 

論文審査の結果の要旨

主査  野出 孝一

副査  出原 賢治

副査  吉田 裕樹

 

本論文は川崎病発症および冠動脈病変とCD14遺伝子プロモーター領域の遺伝子多型との関連について検討している。

同意の得られた川崎病67例,対照69例の全血よりDNAを抽出し,特異的プライマーを用いたPCRで増幅し,制限酵素で切断後にアガロースゲル上で電気泳動にて遺伝子多型CCCTTTを決定した。その結果,川崎病群,対照群における遺伝子多型の有意差はなかった。さらに,急性期冠動脈病変発症例については,発症後1年以降の後遺症の有無についても検討した。急性期冠動脈病変発症例はCC3名,CT4名,TT10名とTTが高く(オッズ比4.05)、後遺症例はCC1名,CT2名,TT7名でTTのオッズは6.61と更に高くなった。CD14はグラム陰性桿菌の菌体成分であるLPSのレセプターであり,遺伝子多型と川崎病の発症には関連はないが,Tアレルを持つことで,急性期冠動脈病変発症および後遺症の残存が有意に高値となる。

本論文は川崎病冠動脈病変とCD14遺伝子プロモーター領域の遺伝子多型の関連性を示しており,臨床的に意義のあるものと考える。

よって本論文は,博士(医学)の学位論文として価値あるものと認めた。