論文の内容の要旨
【目 的】
末梢肺腺癌のサブタイプの薄層CT所見の特徴を明らかにすること。
【方 法】
対象は手術が施行され病理組織学的所見が確認された末梢肺腺癌83症例,87病変。限局性細気管支肺胞上皮癌(グループT),肺胞上皮置換型発育腺癌(グループU),肺胞上皮非置換型発育腺癌(グループV)の3つのグループについて薄層CT所見を解析した。
【結 果】
他のグループに比べグループTはサイズが小さく,グループUは多角形,不整な形態のものが多かった。胸膜陥入像,厚いスピキュラはグループTではみられず,グループUに高頻度にみられた。気管支透亮像,気泡様領域はグループUに高頻度にみられ,グループVでは稀であった。すりガラス影割合はグループTが最も多く,グループVでは少なかった。グループUとグループV間において,CT所見による正診率を検討すると,気管支透亮像または気泡様領域がみられる病変をグループUと考えた場合に最も正診率が高かった。
【考 察】
肺腺癌の組織学的発育形態は予後因子のひとつであり,画像診断や治療方針決定において重要である。予後不良な肺胞上皮非置換型発育腺癌は肺胞上皮置換型発育に比べ,既存肺構造に対して破壊性に破壊するために,CT上すりガラス影割合が少なく,気管支透亮像,気泡様領域があまりみられないと思われる。
【結 論】
薄層CTは末梢肺腺癌の発育形態を反映すると思われ,そのサブタイプをある程度予測できると思われる。
論文審査の結果の要旨
主査 伊藤 翼
副査 徳永 藏
副査 戸田 修二
本論文は,末梢型肺癌のサブタイプの薄層CT所見の特徴を明らかにしたものである。
これによると,対象は手術が施行され病理組織学的所見が確認された83例,87病変を,限局性細気管支肺胞上皮癌(グループT),肺胞上皮置換型発育腺癌(グループU),肺胞上皮非置換型発育癌(グループV)の3つのグループについて薄層CT所見を解析した。グループUは多角形,不正な形態が多く,気管支透瞭像,気泡様領域は高頻度に見られた。これらがグループUとグループVの鑑別点において最も正診率が高かった。すりガラス影割合はグループT〜Vの順に多かった。予後不良なグループVはグループUに比べ,既存肺構造に対して破壊性に破壊するために,CT上すりガラス影割合が少なく,気管支透瞭像,気泡様領域は少なかった。
以上の成績は,薄層CTは末梢肺腺癌の発育形態を反映すると思われ,そのサブタイプをある程度予測できると思われ,新しい知見を加えたものであり,意義あるものと考えられる。
よって本論文は,博士(医学)の学位論文として価値あるものと認めた。