論文の内容の要旨

【目 的】

食道はタバコ・アルコールになど酸化ストレス下にさらされている臓器である。OGG1 DNA 中の8-oxoG を除去し修復する酵素であり、染色体3p26領域に存在する。これまでに食道癌とOGG1 LOH について解析した研究はほとんどされていない。24例の食道癌切除標本よりDNAを調整し、OGG1遺伝子のLOH 解析を行った。また、同症例の標本にて 8-oxoG OGG1 発現とLOH との相関関係を解析した。

【方 法】

24例の食道癌凍結標本および非癌部食道凍結標本よりDNAを抽出し3種のマイクロサテライトマーカーを用いてLOHを検討した。OGG1LOH判定にはOGG1に最も近接するマーカーで判定し、判定不能であった場合はその両サイドのマーカーで行った。同症例の切除標本より8-oxoG OGG1 の抗体を用いて免疫染色を行い、LOH 結果と比較検討した。

【結 果】

24例中20例がLOHの判定可能であった。6例にOGG1LOH(30)を認めた。LOHと病理学的な因子との相関は認められなかったが、LOH(+)であった 6例中5例はOGG1免疫染色で陰性を示した。さらに、8-oxoG OGG1 の免疫染色の結果は逆相関関係にあった。

【結 論】

OGG1の遺伝子アリルの欠失は、OGG1発現減弱→8-oxoG蓄積を介した食道癌の発癌過程に関与する可能性が示唆された。

 

 

論文審査の結果の要旨

主査  藤本 一眞

副査  徳永  藏

副査  吉田 裕樹

本論文は食道癌においてOGG1LOH解析をおこなったものである。OGG1 DNA 中の8-oxoG を除去し修復する酵素であり、染色体3p26領域に存在する。これまでに食道癌とOGG1 LOH について解析した研究はほとんどなく、今回は実際の食道癌症例を用いての解析である。

24例の食道癌凍結標本および非癌部食道凍結標本よりDNAを抽出し3種のマイクロサテライトマーカーを用いてLOHを検討した。OGG1LOH判定にはOGG1に最も近接するマーカーで判定し、判定不能であった場合はその両サイドのマーカーで行った。同症例の切除標本より8-oxoG OGG1 の抗体を用いて免疫染色を行い、LOH 結果と比較検討した。

24例中20例がLOHの判定可能であった。6例にOGG1LOH(30)を認めた。LOHと病理学的な因子との相関は認められなかったが、LOH(+)であった 6例中5例はOGG1免疫染色で陰性を

示した。さらに、8-oxoG OGG1 の免疫染色の結果は逆相関関係にあった。

以上の成績はOGG1の遺伝子アリルの欠失が、OGG1発現減弱→8-oxoG蓄積を介して食道癌の発癌過程に関与する可能性を示すものであった。

 

 よって本論文は、博士(医学)の学位論文として価値あるものと認めた。